模様(薄紫)

入院日誌(手術前日・当日)

日付

主な出来事

10月30日
(月)
手術前日
朝6時起床。今日は朝食から仰向けに寝たまま食べる練習をした。寝ている胸元に台を置き、それを鏡に映して寝たまま口元に運んで食べるのだが、なかなか難しい。感触がつかめれば良いとのことだったので、昼食まで練習し、夕食は普通通りに済ませた。
なお、今日個室が空いたとのことで、昼からベッドごと引っ越しをした。差額ベッド料は一日5千円だが、入院保険で補填できそうだ。
今日は手術前日ということで、他にも次のようなイベントがあった。
@術後使用する抗生剤のテス
手に抗生剤と生理食塩水を少量別々に注射し、抗生剤に対するアレルギー反応をチェックするもの。異常なし。
A麻酔医の説明
明日の全身麻酔等について説明があった。
B剃毛後入浴
手術する腰の部分の産毛を看護婦さんに剃ってもらい、その後入浴(といってもシャワーだけ)した。
C夕食後、座薬による排便
手術当日ではなく前日に腸を空っぽにしておくとのこと。夕食後は絶飲食となった。
D立位の練習
手術後3週間は座れず、寝ているか立っているかしか出来ないとのこと。そのため立った状態から座らずにベッドに寝る方法、また寝ている状態から座らずに立つ方法を習い、練習した。
これを可能とするために、ベッドは腰骨当たりにまで高く調整された。
E手術・麻酔同意書への署名、捺印
この同意書によると、正式な病状の名称は、「腰椎椎間板変性」であり、手術は「後方進入L5/S前方固定術+後方固定術」とのこと。
注)L5とは第5番目の腰椎、Sとは仙骨のことで、この2つの骨を金属で前後から固定するもの。
なお手術のリスクとして、次の同意を求められた。
・不測の事態で神経が障害を受け、術後の麻痺が生じることがあること。
・手術中の出血により本人、家族の了承を得ず輸血を行うことがあること。
・術後の合併症として、手術創の感染、肺炎、また下肢などの血栓が肺などに飛ぶ肺梗塞等があること。
・また、麻酔時の挿管のため、歯の損傷もあり得ること。
手術・麻酔同意書の内容

以上のイベントで疲れたせいか、手術前にも関わらず、すんなりと寝付くことができた。
10月31日
(火)

手術当日
起床後8時頃には処置室に呼ばれ、手術の準備に入る。背中が開いた手術着に着替え、ストレッチャーに寝かされて肩に注射、鼻から胃まで管を入れられる。
全身麻酔してから入れればいいのにと尋ねたところ、
この処置は麻酔してからは出来ないとのこと。
その代わり、気管への挿管や尿道への排尿用カテーテル挿入は全身麻酔後におこなうとのこと。
8時半頃ストレッチャーで手術室に搬送。手術室の看護婦さん、看護士さんの挨拶をうけ、いよいよ麻酔医登場。酸素マスクみたいなものを鼻に当てられ、2回ほど呼吸したら意識不明となった。
・・・・・・この間、約7時間が経過・・・・・・・
気がつくと観察室の自分のベッドに仰向けに寝ており、腰に猛烈な痛みと両足のしびれを感じた。
全身麻酔の7時間は時間の経過を全く意識しなかった。手には点滴の管、尿道には排尿用の管、腰には手術部内部からの出血を排出するドレーンパイプ、口には酸素マスクが付けられていた。
なお、手術は成功したとのこと。主治医に「完璧です」と言ってもらい、家族も安心していた。
手術前後のレントゲン写真比較
なお予定よりも遅くなったのは、丁寧に処置を施しためとの説明があったそうだ。(手術経過の詳細)
痛みが過去仰向けに寝ているときと同様だったので、「先生は間違えて別の部分を手術したのではないか」と何度も聞き直していたという。(覚醒直後ではっきりと覚えていない)
その後、5分ほど家族が面会にきたが、妻が帰ろうとすると「薄情者!!」と怒鳴ったそうだ。妻が理由を聞くと「おまえが帰ると痛いと言う相手がいなくなるじゃないか」と言ったそうな。これを聞いていた看護婦さんが「私に痛いって言っていいんですよ。」
その後も仰向けに寝かされていたが、痛くて痛くてたまらない。痛み止めの座薬、注射も限度いっぱいに処置してもらったが、痛みが治まらない。「この病院にはペインクリニックもあったじゃないか。どうにかならないものか」とか、「戦争映画でよく米軍が負傷兵の腿にモルヒネを注射すると痛みを忘れて穏やかになるシーンがあるじゃないか。どうしてそのような処置をしてくれないのか」とか考えたり、「もう一回麻酔をかけてくれ」と看護婦さんにお願いしたりしていた。
確かにインターネット上に公開されている他の人の手術体験談をみても、術後の痛みがひどいという話はあまり無かったので、この痛みは予想外のことであった。
あまりに痛がるので、夜勤の看護婦さんが主治医に連絡してくれて両サイドをクッションでしっかり固定して横向きにしてくれた。(本来ならば術後1日経たないと横向きには出来ないそうだ)
これで多少痛みは治まったが、今度は眠ってしまうと無意識のうちに痛みから逃れるために起きあがったり寝返り等をしてしまいそうで、「もし寝返りをして腰でもひねったらどうしよう」と、不安で眠れなくなった。
結局痛みを味わいつつ、徹夜してしまった。
痛みを我慢すると「うー」と声が出てしまうが、なぜ「あー」とか「えー」ではなく「うー」なんだろう、とかどうでもいいことばかり考えていた。
この夜は観察室というナースステーションの隣の部屋で過ごした。仕事とはいえ一晩中そばで様子を見守り、励ましてくれた看護婦さんが天使に思えた。看護がいかに励ましになるかが初めてわかった。


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